yuyuの備忘録

読書記録、ときどき海外ドラマ。

「自由への道(3)」J・P・サルトル

海老坂武・澤田直
岩波文庫
2009

第二部「猶予」。

分別ざかりの続きとして読み始めると面食らう。
解説によれば文学史上類を見ないモンタージュ手法で描かれているという。

とにかく読むのが大変。
なにしろ新たに19人の登場人物が加わり、更にチェンバレンヒトラーら、歴史的登場人物、さらにその周囲の人々と総勢100人近い人物が急に登場するのだ。
前作までの主人公マチウは数多の登場人物の中に埋没してしまっている。ボリスとイヴィックに関してはもはや手紙でしか登場しない。
場所もほぼパリだけに限られていた前巻までに対し、ドイツ、チェコ、アフリカと各地に及ぶ。
それらが時には段落を変えることなく、ひたすらに描写が続くのだ。
ここで挫折してしまうのもよく分かる。

新しく登場した視点で興味深いなと思ったのは療養所にいるシャルル。
寝たきりの彼は戦争が迫って担架で別の場所に避難させられることになる。彼の視点から見た戦争は全く自分には関係のないもの。全ては立った人たちが始めた戦争。

もうひとり、マチウの兄の妻オデット。
これまでマチウの視点から描かれていたオデット。彼女の視点から見たマチウはロマネスクで、そんな彼に惹かれていることが分かる。
また、女性からの視点で眺めるとまた違った景色が見える。決して自分が参加することのない戦争について何を語れば良いというのだろうかと思い悩む様子が窺える。

まだバラバラに登場人物が出てきだけの状態。きっとこの先、これらの登場人物が繋がってゆくのだろう。頑張って読み進めたい。

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