yuyuの備忘録

読書記録、ときどき海外ドラマ。

「隠された十字架-法隆寺論」梅原猛

新潮文庫
1981

吉本隆明中沢新一との対談が難しすぎたため、一度も読んだことのない梅原猛の本をきちんと読んでみたいと思い手に取った「隠された十字架」。

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聖徳太子ゆかりの寺とされる法隆寺だが、実は太子とその一族の鎮魂のための寺ではないかというのがこの本の論旨。
その根拠として例えば、日本において祀られてきたのは政治的敗者や悲惨な最期をとげたものが多いということ。そして太子の息子である山背大兄王ら一族が一網打尽にされたこと、歴史の中での藤原氏の言動を挙げている。

率直に、どうしてこれがベストセラーになったのかと疑問が浮かぶ。
「太子の魂よ、〜」「〜思いはこうではなかっただろうか。」等、言い回しが独特で推察が多いのに独断的である。

もう一つの疑問が、この本がベストセラーになったあと果たして法隆寺に対する見方は変わったのかということ。
少なくとも私自身はこの本を読むまで法隆寺は太子ゆかりの寺、というのが刷り込まれていた。
独断的な部分はあったにせよ、根拠を挙げながらの大胆な仮説であったことは間違いない。反論含め、学術的な議論はなされたのだろうか。