yuyuの備忘録

読書記録、ときどき海外ドラマ。

「フランス革命の代償」ルネ・セディヨ

山崎耕一訳草思社文庫2023 著者、ルネ・セディヨは経済雑誌La vie Françaiseの編集長を長く務めた人物。客観的にフランス革命がプラスだったのかマイナスだったのか、収支決算すると冒頭に書かれているが、歴史を決算するなどそう簡単に出来るものではない。…

「日本探検」梅棹忠夫

講談社学術文庫2014 文明論的紀行を書くという趣旨のもと、1959年から中央公論に連載された「日本探検」。論考は大きく分けて福山、綾部、北海道、高崎山。 福山の旅では地方と中央との関係に思いを馳せる。綾部は大本教発祥の地。エスペラントを軸として、…

「隠された十字架-法隆寺論」梅原猛

新潮文庫1981 吉本隆明と中沢新一との対談が難しすぎたため、一度も読んだことのない梅原猛の本をきちんと読んでみたいと思い手に取った「隠された十字架」。 yyy1994.hatenablog.com 聖徳太子ゆかりの寺とされる法隆寺だが、実は太子とその一族の鎮魂のため…

海外ドラマ「カササギ殺人事件」

キャスト レスリー・マンヴィル、コンリース・ヒル、ティム・マクマランほか製作年 2022 原作は2019年にこのミステリーがすごい!を始めとする数々の賞を受賞したアンソニー・ホロヴィッツの小説。それをホロヴィッツ自ら脚色してドラマ化したもの。 カササ…

「美貌格差:生まれつき不平等の経済学」ダニエル・S・ハマーメッシュ

望月衛訳東洋経済新報社2015 タイトル通り、美形かどうかが人生、中でも仕事に与える影響について論じたもの。そのためには美形の定義からしなければならない。顔に点数をつけて採点してもらうしかない。著者によると、美形かどうかは世代や人種によってあま…

「現代ロシアの軍事戦略」小泉悠

ちくま新書2021 ロシアによるウクライナ侵攻前の本。 あとがきで著者自ら述べているように、かなり軍事寄りの視点からのロシア分析。読んでいけば、強いわけではないが弱くもないロシア軍、という意味がよく分かる。そして、いかに普段西側からの視点で物事…

「ヘンリー六世」ウィリアム・シェイクスピア 松岡和子訳

ちくま文庫2009 リチャード三世のあと続きで読みたいと思いつつ、値段が結構するなあと思っているうちに間が空いてしまった。 yyy1994.hatenablog.com 描かれるのはジャンヌ・ダルクも登場する100年戦争末期から薔薇戦争。国内の政局対立が戦場にも持ち込…

「日本人は思想したか」吉本隆明・梅原猛・中沢新一

新潮文庫1998 対談本で面白いと思うものはほぼほぼないのに、古本屋で見つけたらついつい買ってしまって後悔する。今回も後悔する方の一冊だった。 3人はわかり合っているのかもしれないけれども、読者は置いてけぼり。もしかしたら当の3人だって相手の言…

「ラスプーチンが来た」山田風太郎

文春文庫1988 日露戦争ではロシアに潜入して工作を行い多大な貢献をした明石元二郎。その彼の若かりし頃の物語。どこまでが史実で、どこまでがそうではないのか分からない、山田風太郎作品の魅力が全開。司馬遼太郎の坂の上の雲を読んでいる人にはかなり楽し…

「黎明 日本左翼史 左派の誕生と弾圧・転向 1867ー1945」池上彰・佐藤優

講談社現代新書2023 池上彰と佐藤優による日本左翼史シリーズの4冊目。戦前を扱った今回で最終巻。 池上彰と佐藤優による左翼史シリーズは、共産党とは別の視点から日本の左翼氏を振り返る試みが必要なのではないかという思いから始まっている。結党100年を…

「ベルリンは晴れているか」深緑野分

ちくま文庫2022 一見外国の小説の翻訳のような、深緑野分の小説。そのあらすじは、1945年、4カ国分割統治下にあるベルリンで少女アウグステが殺人事件の捜査に挑むというものだ。 アウグステとその相棒カフカが殺人事件の捜査に巻き込まれていくという大ま…

「モーパッサン短編集(三)」

青柳瑞穂訳新潮文庫1971 3冊刊行されている新潮社のモーパッサン短編集。フランスの作家、モーパッサンについて。1850年、ノルマンディー生まれ。普仏戦争に従軍。30歳のときに発表した「脂肪の塊」が評価され、次々と作品を発表。神経系の病気に苛まれ、42…

「オペラをつくる」武満徹・大江健三郎

岩波新書1990 武満徹と大江健三郎が新作オペラの構想とそのアイデアを話し合う。その創造の過程を記録した貴重な一冊。対談は数回に及ぶ。その間も2人とも色々考えては却下して、アイデアの一部は別の場所で別の形で実現したり。結局この構想は実現しなかっ…

「八月の御所グラウンド」万城目学

文藝春秋2023 鴨川ホルモー以来、16年ぶりに万城目学が京都を舞台に書いたという。収録されているのは短編2作、「十二月の都大路上下ル」と「八月の御所グラウンド」だ。 感想を一言でいえば、これを万城目学が書く必要があったのかということ。けれど、…

「ノートル=ダム・ド・パリ」ヴィクトル・ユゴー

大友徳明訳角川文庫2022 2022年に出た新訳。当時の挿絵が良い。ユゴーがこの物語を記したのが1831年。物語の舞台は15世紀のパリ。ノートルダムやシテ島など、変わらぬ情景に導かれるように15世紀という昔に思いを馳せる。 物語自体は一言でいえば、恋で何も…

「ガリア戦記」ユリウス・カエサル

國原吉之助訳講談社学術文庫1994 カエサルが記したガリア戦記。紀元前58年~51年のガリア、ゲルマニア、ブリタニアへの遠征の記録で、ラテン語の名文とされている。カエサルは名文家なのだと実感したのは最後の章。この8年目の戦争の章だけアウルス・ヒ…

「日本人の質問」ドナルド・キーン

朝日文庫2018 ドナルド・キーンの日本文化に関するエッセイを一冊の本にまとめたもの。全てが面白かったとは言わないけれど、いくつかは面白く読んだ。 ひとつは、表題にもなっている「日本人の質問」というエッセイ。よく聞かれる質問に答える形で話が展開…

「パリは燃えているか?」ラリー・コリンズ、ドミニク・ラピエール

志摩隆訳ハヤカワ文庫2016 以前に映画版を観た「パリは燃えているか?」。ジャン=ペール・ベルモンドにアラン・ドロン、カーク・ダグラスと仏米のスターが勢ぞろいした映画だったということの他はあまり印象に残っていない。ずっと古本屋にあって買おうか迷…

海外ドラマ「ミステリー・イン・パラダイス」Season 5

キャスト クリス・マーシャル、ジョセフィン・ジュベール、ダニー・ジョン=ジュールス、トビー・バカレほか製作年 2016 カリブ海にある架空の島、サン・マリー島を舞台にしたBBC制作のミステリー。Season4でカミーユがいなくなってしまってから見るのをやめ…

海外ドラマ「アストリッドとラファエル〜文書係の事件録〜」Season 2

フランスのミステリードラマのSeason2。NHKにて放送。 キャスト サラ・モーテンセン、ローラ・ドベールほか製作年 2021 以前から日本人の経営するお店にアストリッドが買い物にいったりはあったけれど、全体的に更に日本という要素が強めのSeason2。第二話な…

「花田清輝」(ちくま日本文学全集)

1993筑摩書房 花田清輝を知ったのは、猪瀬直樹の三島由紀夫伝だ。そこで引用されている仮面についての考察が強く印象に残っている。三島や太宰が常に自分に向けて仮面をつけていたというような内容。 花田清輝の本はほとんどが絶版。今までに読んだどの評論…

海外ドラマ「ブラウン神父」Season 4

キャスト マーク・ウィリアムズ、ソーシャ・キューザック、ナンシー・キャロル、アレックス・プライス、ジャック・ディームほか製作年 2016 細々と見続けているブラウン神父。45分で気軽に見やすくて、暗くもないので時にはちょうどよい。Season 4は全10話。…

「終戦日記一九四五」エーリッヒ・ケストナー

酒寄進一訳岩波文庫2023 手嶋龍一氏が読んだ本で挙げていて、読みたいと思っていたケストナーの終戦日記。残念ながら絶版でどこかにないかと探していたら、新訳が出た。 克服されないままのあの過去は、日中でも、夢の中でも迷いでて徘徊する幽霊と同じだ。…

「逆立ち日本論」養老孟司・内田樹

新潮選書2007 対談本にありがちな、読み手のことはほとんど想定されていない本。知識の披露のし合いみたいなところはどうしてもある。その中でちょっとでも発見があれば良い方かなと思う。終盤にあった、機能不全に対して壊して作り直す方向にしか目がいかな…

「ボクの音楽武者修行」小澤征爾

新潮文庫2002 2002年に新潮文庫から出た新装版。 1959年24歳で、神戸からスクーターをお供に貨物船に乗ってヨーロッパへ向かった小澤征爾。そのときのことを1962年に書いたもの。 ヨーロッパに着いてすぐ、たまたま開催されていたブザンソンのコンクールに出…

「ヒトラーのオリンピックに挑め-若者たちがボートに託した夢」ダニエル・ジェイソン・ブラウン

森内薫訳ハヤカワ・ノンフィクション文庫2016 スポーツ青春小説といったところだろうか。文庫本で上下2冊。 ボートというと上流階級、そして東部のもの。そんな常識に挑戦し、オリンピックへの切符を目指す西部のワシントン大学の労働者階級中心の青年たち…

「世界史を変えたスパイたち」池上彰

日経BP2023 やっぱり池上彰という人はスパイの話が一番好きなのではないだろうか。さすがの知識で、スパイが関わってきた歴史から今の状況までとてもよく分かる。 CIAが南米始めとするいろいろなところで工作をしていたというのは何となく知っていたけれど、…

「リチャード三世」ウィリアム・シェイクスピア 福田恒存訳

新潮文庫1974 無名塾の舞台バリモアを観て、引用されるリチャード3世の台詞の数々をもっと理解出来たらなと思ったので手にとった一冊。舞台バリモアは仲代達矢が80歳になって始めて一人舞台の挑戦となった作品で、今回はその再演。もとはクリストファー・プ…

海外ドラマ「シャーロック」Season 4

製作年 2017キャスト ベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン他 www.youtube.com 日本では映画として公開された"忌まわしき花嫁"含めて、season4は六つのサッチャー、伏せる探偵、最後の問題。 とにかくジョンとシャーロックを想うメアリーが…

「フルトヴェングラー」吉田秀和

河出文庫2011 吉田秀和没後10年に出た新装版。 今や音楽評論家は皆無といっていい。クラシックコンサートの下調べで批評を探してみても、ほぼほぼ絶賛する記事。どんな一流でも出来の悪い回はあるはずなのに、ほとんど見当たらない。これで良いのかと思って…