yuyuの備忘録

読書記録、ときどき海外ドラマ。

「ボクの音楽武者修行」小澤征爾

新潮文庫
2002

2002年に新潮文庫から出た新装版。

1959年24歳で、神戸からスクーターをお供に貨物船に乗ってヨーロッパへ向かった小澤征爾
そのときのことを1962年に書いたもの。

ヨーロッパに着いてすぐ、たまたま開催されていたブザンソンのコンクールに出て優勝してしまったのだからすごい。しかも書類提出が間に合わず、日本大使館などでは相手にしてもらえなかったら楽団のあるアメリカ大使館へ行き、そこで何とか口利きをお願いしてやっと参加が叶ったという。
そのエピソード含め、ヨーロッパやアメリカの芸術家を大切にする文化に触れては、日本との差を感じた様子。
その感覚はきっとその後も変わらず、だからこそサイトウ・キネン(松本フェスティバル)やオペラプロジェクトを続けて何とかその状況を変えようとしてきたのだろう。その思いは未だ叶っていない気がする。

フランスやドイツよりも、アメリカが肌にあっていたのだろう。
3カ国のオーケストラの特徴比較がとても興味深かった。バラバラで揃わないフランス、いつでも揃っているドイツ、そして指揮者次第で揃ったり揃わなかったりするアメリカ。どれも個性が違っていて面白い。

全体を通して感じたのはその行動力とエネルギー。
師事したいと思う人の指導が受けられる機会と聞けばどこでも飛んでゆき、何が何でもそこへの挑戦権を手に入れるその姿勢。合間に思いっきりスキーを楽しんだりしているのは若いからというのが大きいかもしれないけれど。
指揮者は体力だと本人も書いていたけれど、まさにその通りなのかもしれない。