「逆立ち日本論」養老孟司・内田樹

新潮選書
2007

対談本にありがちな、読み手のことはほとんど想定されていない本。知識の披露のし合いみたいなところはどうしてもある。その中でちょっとでも発見があれば良い方かなと思う。
終盤にあった、機能不全に対して壊して作り直す方向にしか目がいかないのか、成熟していないのだから改善しようという考えがどうして政治家からもマスコミからも出てこないのかという指摘はもっともだと思った。
ただ、この対談のきっかけにもなったというユダヤ人の話の部分は不満が残った。
読んでいる方は置いてけぼりで２人の間だけで解決されてしまったような感じ。

全体として、会話が噛み合っているようで噛み合っていないような印象。
養老さん目当てでこの本を手に取った私としては、内田樹という人はあまり解剖学というものに興味を持っていないのではないだろうかなどと思ったりもした。相手の核になる部分に興味を持っていないから、会話が噛み合っているようで噛み合っていないのではないかと。
自分のフィールドに話を持っていくのではなくて、互いの重なり合う部分で話を進めてくれていたら読む際に感じるこの違和感は払拭されたのかもしれない。