yuyuの備忘録

読書記録、ときどき海外ドラマ。

「オペラをつくる」武満徹・大江健三郎

岩波新書
1990

武満徹大江健三郎が新作オペラの構想とそのアイデアを話し合う。その創造の過程を記録した貴重な一冊。
対談は数回に及ぶ。その間も2人とも色々考えては却下して、アイデアの一部は別の場所で別の形で実現したり。結局この構想は実現しなかったわけだが、まずオペラを作る上での"ビジョン"から話し合っていくのが非常に面白い。

2人の作りたかったのは、暗黒舞踏鈴木忠志の舞台をオペラにしたようなものイメージだろうか。そこに広い意味での、人間が生きていくうえで避けて通れないものとしての「政治性」を盛り込む。
自分にはさっぱり分からない予感しかしないけれど、どんなものが出来上がっていたのか観てみたかった。

日本で出来たオペラが外国で上演されるようなことがこの先あるのだろうか。
例えばさわかみオペラ。日本のオペラを作るという目標を掲げているが、今はまだ市民オペラや留学支援、そしてオーケストラ設立など、まだオペラを作るための下地作りをしているように思える。

新国立劇場からは新たなものを生み出そうという気概は感じられない。
いっそのこと、海外で面白い日本人がポンっといきなり新しいものを作ってしまったりしないだろうかと淡い期待を持ちながら。