新潮文庫
1974
無名塾の舞台バリモアを観て、引用されるリチャード3世の台詞の数々をもっと理解出来たらなと思ったので手にとった一冊。
舞台バリモアは仲代達矢が80歳になって始めて一人舞台の挑戦となった作品で、今回はその再演。
もとはクリストファー・プラマーが演じていて、彼はそれで最年長オスカーに輝いている。
自分なんかが逆立ちしたって手も届かない、決して観ることのない景色を見ている仲代達矢の境地。彼への観客の尊敬も感じられる舞台だった。
読んでみて、リチャード3世を演じたくなる演者の気持ちが分かった気がする。薔薇戦争の背景が分かるまでちょっと大変だったけれど..
暗殺の場面などもほとんど出てこず、リチャード3世の台詞で語られる。まさに演じる側の力量が試される。
下手な役者がやればただのコンプレックスに苛まれた男か、権力を得るため周囲の者を手段問わず片付けてゆく、残忍で人望もない男。
でもリチャード3世はそれだけではない、複雑な魅力も兼ね備えたキャラクターだ。
名君だったという説もあるらしい。口は上手く、アンを口説く場面などまさに役者だ。
もしも出来ることなら、仲代達矢のリチャード3世が観てみたかったなあと思わせてくれた。