大友徳明訳
角川文庫
2022
2022年に出た新訳。当時の挿絵が良い。
ユゴーがこの物語を記したのが1831年。物語の舞台は15世紀のパリ。
ノートルダムやシテ島など、変わらぬ情景に導かれるように15世紀という昔に思いを馳せる。
物語自体は一言でいえば、恋で何もかも見えなくなってしまった人たちの物語。
ジプシーの絶世の美女エスメラルダにノートルダムの司教フロロ、そして鐘つきのカジモド。
一番の読みどころはエスメラルダを取り返そうとノートルダムに集まるクロパンらとそれに相対するカジモドのくだりだろう。
フロロの行動も狂気なのだけれど、フェビュスしか見えなくなってカジモドの親切や好意にも気が付かないエスメラルダも狂気だ。
登場人物そろいもそろって周りが見えなくなって思い詰めていく、それが理解できないといったらそれまでだけれど。