yuyuの備忘録

読書記録、ときどき海外ドラマ。

「パリは燃えているか?」ラリー・コリンズ、ドミニク・ラピエール

志摩隆訳
ハヤカワ文庫
2016

以前に映画版を観た「パリは燃えているか?」。
ジャン=ペール・ベルモンドにアラン・ドロンカーク・ダグラスと仏米のスターが勢ぞろいした映画だったということの他はあまり印象に残っていない。
ずっと古本屋にあって買おうか迷っていたが、とうとう購入。

なんといっても印象に残るのはパリ解放を熱狂的に迎えるパリ市民を描いた部分。初めて見る花の都パリで市民(特に若い女性)に熱狂的に迎えられた良い思い出として記憶している人が多かったのだろうことがうかがえる。
その一方、たった一本道が違うだけで戦闘は続いており、ほぼ解放という最中で命を落とした兵士や市民たちの存在も忘れられない。

加えてパリ解放のもうひとつの面、ド・ゴール共産主義者との政治権力争い。
いち早くパリを解放した将軍として凱旋することを目指すド・ゴール。どんなことがあっても共産主義者に出迎えられるなんてことがあってはならないというド・ゴールの強い決意。
パリでレジスタンスとして戦っていたロル将軍たちからすると、最後のところでド・ゴールにまんまとやられてしまったというところだろうか。

登場人物が多くて分かりにくいのは映画と同じ。登場人物の多さを考えると巻末に索引が必要だと思うレベル。
普通の人たちの様子からパリ解放の様子を描きかったその意図は理解できる。資料から調べがついた人物は全て記録して残したかったという思いも伝わる。
しかし、読み物としては分かりにくいと言わざるを得ない。重要なのが誰で、この先も登場するのは誰なのか分からない。

兵士や市民の様々な視点から描かれるぶんド・ゴールやコルティッツ、ノルドリンク、ルクレール、ロル大佐らの描写が少なく、物足りなさが残る。

一番印象に残った人物は、ドイツの情報機関アプヴェーアのボビー・ベンデル。素性が謎に包まれた彼は一流の情報をノルドリンクに届け、時にはカーチェイスまでする。そのインパクトは抜群だった。彼の本があるのならば読みたい。